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生体機能制御学- 生体機能制御学部門 -

ホルモンから生体の機能制御機構を探る

生体機能制御学(先端医学研究所 生体機能制御学部門)へのお問い合わせ

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研究内容

生体は、栄養状態の変化、気温の変化、ストレスなどの環境の変化に常に曝されているが、このような環境変化に対して適応しようとする生体防御系を使って恒常性(ホメオスターシス)を維持している。この生体防御系は、内分泌系、免疫系や神経系が細胞外シグナル伝達系として細胞/組織間の命令の伝達を司り、引き続いて細胞内シグナル伝達系が個々の細胞反応を巧妙に制御することにより営まれている。しかし、急激または過剰な環境の変化等でこの防御システムが機能不全に陥ると、中枢および末梢における細胞現象が異常を来し、様々な病態を発症する。

私達は、生体のホメオスターシスを維持するために巧妙に仕組まれている制御機構について、ホルモン/サイトカインと呼ばれる生理活性物質がどのような機序によって調節をしているのか、細胞から個体レベルまでの実験系によって研究を行っている。

特に、成長ホルモンを代表とする下垂体ホルモンの分泌調節と生理作用
   インスリンとインスリン様成長因子(IGF-I)の活性制御機構
   アディポサイトカインの抗炎症作用と動脈硬化の防御機構
についての研究を中心に行っている。

そして、これらの研究を通じて、最終的には生体機能の全体的制御機構の解明と、関係する疾患の病態の解明を目指す

1.成長ホルモンの分泌調節機序と生理作用

成長ホルモンの分泌は拍動性であり、視床下部ホルモンである成長ホルモン分泌促進因子とソマトスタチンによって分泌調節されている。成長ホルモン分泌の調節には、分泌リズム形成とネガティブフィードバック機序が最も重要であるが、十分な機序の解明は未だになされていない。一方、成長ホルモンの作用として、単に骨や筋の成長を促進するのみならず、糖代謝、脂肪代謝、水代謝などのさまざまな代謝作用がある。これらの代謝作用の細胞レベルでの詳細は十分に解明されていない。

私達は、成長ホルモンの分泌調節機序の解明、拍動性分泌の代謝作用に対する意義の解明、細胞レベルでの成長ホルモンの新たな作用とその意義、などについて研究を進めている。

2.栄養状態に応答した代謝制御機構の解明 −インスリン・インスリン様成長因子(IGF)−Iの活性制御を中心に−

栄養状態の変化は、代表的な環境変化の一つである。私達は、三大栄養素の一つであり、生体の主要構成成分であるタンパク質に着目し、タンパク質栄養状態に応じて変動する代謝の連携システムを明らかにする目的で、動物(ラット・マウス)や初代培養細胞を用いて研究を行っている。タンパク質が不足すると成長期の動物では成長遅滞が起こるが、これはIGF-Iの生理活性の低下を介して起こることが知られている。他方、私達は、同じ状態の動物でインスリン感受性が上昇することを明らかにしてきた。現在、生体がタンパク質不足に応答して、IGF-I 作用と相反してインスリン作用を増強する機構とその生理的意義の解明を目指している。

3.アディポサイトカインと炎症・動脈硬化 −アディポネクチンの抗炎症機構を中心に−

脂肪組織は人体の中で最大の内分泌臓器であり、アディポサイトカインと総称される生理活性物質を活発に放出している。栄養状態など環境の変化により引き起こされる内臓脂肪型肥満、すなわち内臓脂肪の過剰蓄積が起こると、アディポサイトカインの分泌異常を引き起こし、動脈硬化やインスリン抵抗性といったメタボリックシンドロームの病態を呈する。また、血管壁や脂肪組織といった局所での炎症系細胞の浸潤や炎症性サイトカイン/ケモカインの発現は、動脈硬化やインスリン抵抗性を惹起することが明らかになるにつれ、肥満は慢性炎症性疾患としても考えられるようにもなった。私達は、特に抗炎症作用を有するユニークなアディポサイトカインであるアディポネクチンに着目し、各炎症性病態、特に動脈硬化におけるマクロファージに対するアディポネクチンの抗炎症機構の解明に取り組んでいる。

また、成人成長ホルモン分泌不全症(aGHD)では、心血管系疾患、糖脂質代謝異常を高率に合併するが、内臓脂肪が優位に蓄積する事も知られる。私達はaGHDの病態が、過栄養と運動不足によるエネルギーバランスの破綻により生じた内臓脂肪蓄積(メタボリックシンドローム)と病態が類似している事に着目し、メタボリックシンドロームにおいても成長ホルモンの分泌/作用不全が少なからず関与しているのではないかと仮説を立てている。アディポネクチンとの相互作用も視野に入れながら、現在基礎的な検討を進めている。

なお、日本医大武蔵小杉病院内科(川崎市中原区小杉町)においては内分泌・代謝学を担当し、専門外来診療を行っている。